シャンプーとトリートメント、本当はどちらが大事?
- 才野 栄治

- 10月26日
- 読了時間: 10分

あなたは今、こんな悩みを抱えていませんか?
「シャンプーは高価なものを使っているのに、いまいち髪の調子が良くならない」
「ダメージが気になるから、トリートメントをたっぷり使っているけれど効果が見えない」
「店頭に並ぶ膨大な種類のシャンプーとトリートメント。結局、何を基準に選ぶのが正解なの?」
美容室で日々多くのお客様の髪に触れ、その悩みを伺う中で、私は一つの大きな誤解に気づきました。それは、多くの方が「トリートメントこそが髪を綺麗にする主役だ」と信じ込んでいることです。
もちろん、トリートメントは髪のダメージを補修し、手触りを良くしてくれる素晴らしいアイテムです。しかし、プロである美容師の視点から言わせてもらうと、**ヘアケアにおいて圧倒的に重要度が高いのは、実は「シャンプー」**なのです。
「え、そうなの?」と驚かれた方もいるでしょう。
この記事では、現役美容師である私が、なぜシャンプーとトリートメントの「重要度」に差が生まれるのか、その役割の違いから、あなたが本当に投資すべきアイテムと選び方までを、「本音」で徹底解説します。
シャンプー選びを変えるだけで、あなたの髪は劇的に変わります。この記事を読み終える頃には、無駄なヘアケアから卒業し、**一生モノの「髪の土台作り」**を手に入れることができるでしょう。
さあ、あなたのヘアケアの常識を覆す、美容師の本音に耳を傾けてみてください。
結論から言うと「シャンプー」が重要
いきなりですが、美容師としての私の本音をお伝えします。
シャンプーとトリートメント、どちらが大事かと聞かれれば、迷わず**「シャンプー」**と答えます。
多くの人がトリートメントを重視しがちですが、それは例えるなら、「いい髪は良い頭皮から、畑が良くないと、いい作物は出来ない」のと同じ理屈です。
シャンプーの役割は、単に髪を洗うことではありません。健やかな髪と頭皮という「土台」を整えることにあります。この土台作りがうまくいっていない限り、どんなに高級なトリートメントを髪につけても、その効果は半減、あるいはゼロになってしまうこともあります。
あなたのヘアケアの成果を最大化するためには、まずこの「土台」に最大限の注意と投資をする必要があるのです。
なぜシャンプーが「土台」なのか?
シャンプーの重要性が高い理由を、その役割と機能から深く掘り下げていきます。
役割の明確化:シャンプー=「マイナス」のケア(洗浄)
ヘアケアを考える上で、まず知ってほしいのは、シャンプーが担うのは「マイナスのケア」だということです。
シャンプーの役割: 髪や頭皮に付着した汚れ、皮脂、ホコリ、スタイリング剤、そして酸化した油分などを取り除くこと。
これらはすべて、髪のキューティクルを傷つけたり、頭皮の炎症や臭いの原因になったりする「マイナス」の要素です。これらのマイナス要素を完全に、かつ優しくリセットしなければ、髪の健康は保てません。
一方、トリートメントは「プラスのケア」です。髪に油分や保湿成分、補修成分を与えることが役割です。
もしシャンプーで汚れや古い皮脂が残ったままの状態(マイナス要素が残った土台)に、トリートメント(プラス要素)を乗せるとどうなるでしょうか?
汚れの上に栄養を塗り重ねることになり、トリートメントの浸透を妨げ、ベタつきや頭皮トラブルの原因にさえなり得ます。これが、シャンプーが最優先されるべき「土台」である理由です。
失敗するシャンプー選びの危険性(洗浄成分、残留物)
では、どのようなシャンプーが「土台作り」を失敗させるのでしょうか?最大の敵は、洗浄成分の**「強さ」と「残留物」**です。
市場には、洗浄力が強すぎる「高級アルコール系」や、泡立ちを良くするためや、手触りをよくするために必要以上に化学物質を配合したシャンプーが溢れています。
洗浄力が強すぎるシャンプー: 頭皮に必要な天然の保湿成分(皮脂膜)まで根こそぎ洗い流してしまい、頭皮の乾燥やかゆみ、ひどい場合はフケや炎症を引き起こします。頭皮環境が悪化すれば、そこから生えてくる髪も細く弱くなってしまいます。
残留しやすいシャンプー: シリコンや特定の油分が過剰に含まれているシャンプーは、髪の表面をコーティングしすぎたり、頭皮の毛穴に詰まったりする可能性があります。これらは一時的に手触りを良くしますが、髪の内部への栄養浸透をブロックし、長期的に見るとゴワつきやカラーの色ムラの原因になります。
安価なシャンプーで洗浄力ばかりを重視してしまうと、「落としすぎ」による頭皮の乾燥と、「残留」による栄養のブロックという、最悪のループに陥ってしまうのです。
美容師が考える「良いシャンプー」の条件
「良いシャンプー」とは、髪質や悩みに合わせて洗浄成分をバランス良く選定し、優しく洗い上げつつ、余計なものを残さず、さらに髪や頭皮を整えるシャンプーです。
まず美容師が着目するのは、パッケージに記載されている**「洗浄成分(界面活性剤)」**の種類です。
【美容師が推奨する理想的な洗浄成分】
成分の系統特徴とメリットアミノ酸系低刺激で洗浄力が穏やか。髪や頭皮の保湿成分をキープしながら洗えるため、乾燥肌や敏感肌の方に最適。ベタイン系非常にマイルドで、赤ちゃん用品にも使われる成分。アミノ酸系と組み合わせて洗浄力を調整するのによく使われる。PPT系洗浄成分自体がタンパク質(ケラチンなど)由来。洗うたびに髪にハリ・コシを与える効果も期待できる。
結論: 高価だから良いわけではありません。アミノ酸系やベタイン系をメインに配合した、髪と頭皮に優しいシャンプーこそが、健康な髪の土台を作るための最良の選択なのです。
トリートメントは「仕上げ」であり「オプション」
シャンプーで「土台」が整った後、トリートメントは初めてその真価を発揮します。トリートメントは、完璧な「仕上げ」であり、**シャンプーで補えなかった部分を補強する「オプション」**だと捉えてください。
役割の明確化:トリートメント=「プラス」のケア(補修・コーティング)
トリートメントの主な役割は以下の2点です。
内部補修(インナーケア): 傷んだ髪の内部(コルテックス)に、ケラチンなどのタンパク質やアミノ酸を浸透させ、ダメージを埋めて髪の強度を高める。
表面保護(アウターケア): キューティクルの表面を整え、油分やシリコンなどで薄くコーティングし、手触りを良くし、外部ダメージから髪を保護する。
シャンプーで優しく洗浄された、余計なものが残っていない「まっさらな髪」であれば、トリートメントのこれらの補修成分や保護成分は、最大限に浸透・密着することができます。
つまり、トリートメントの効果は、シャンプーの質に完全に依存していると言っても過言ではありません。
シャンプーが良ければトリートメントはシンプルでいい理由
もしあなたが、髪と頭皮に合った良質なシャンプーを選んでいるなら、トリートメントにそこまで高価なものを選ぶ必要はありません。
良質なシャンプーは、洗浄時に髪の保湿成分を奪いすぎないため、トリートメントで補うべきダメージの絶対量が少なくなります。
逆に、シャンプーの洗浄力が強すぎると、髪の内部はスカスカになり、それを補うために高価なトリートメントやホームケア、サロンケアが必要になってしまいます。
【ヘアケア投資の優先順位(美容師視点)】
シャンプー(土台): 髪と頭皮の環境を整える
アウトバストリートメント(保護): ドライヤーの熱や摩擦から髪を守る
インバストリートメント(補修): 必要なダメージ補修を行う
このように、トリートメントは「ダメージを補う」ための製品であり、シャンプーでダメージを最小限に抑えることが、最も経済的で効果的なヘアケアなのです。
効果的なトリートメントの使い方(放置時間、流し方)
せっかく良いトリートメントを使うなら、その効果を最大限に引き出しましょう。
水気をしっかり切る: 髪に水分が残りすぎていると、トリートメントの成分が薄まり、浸透しづらくなります。タオルで優しく絞る程度に水気を切ってから塗布してください。
中間〜毛先がメイン: トリートメントはダメージが気になる髪の中間から毛先に揉み込むように塗布します。頭皮に付くと、毛穴を詰まらせたり、ベタつきの原因になるため避けてください。
コームで馴染ませる: 手で塗布した後、目の粗いコーム(または手櫛)で軽く全体をとかすことで、成分が均一に行き渡ります。
放置時間は5分程度: あまり長時間放置しても、そこから効果が劇的に上がるわけではありません。お風呂で体を洗う間など、5分程度で十分です。
しっかり流すが、滑りは残す: 流しすぎると補修成分も流れ出てしまいます。髪のぬるつきがなくなり、指通りが良くなる程度の「少し滑りが残るかな?」という状態で終えるのが理想です。
髪質別・悩み別の「最適解」
あなたの抱える具体的な悩みに合わせ、シャンプーとトリートメントの具体的な選び方、組み合わせ方をアドバイスします。
枝毛・切れ毛が気になる方へのアドバイス
この方の髪の状態: 髪の内部のタンパク質が流出し、キューティクルが剥がれている状態です。
シャンプー: PPT系(ケラチンやコラーゲン配合)をメインとしたアミノ酸シャンプーを選びましょう。洗浄しながら、髪の主成分であるタンパク質を補い、土台の強度を上げてくれる効果が期待できます。
トリートメント: セラミドやオイル成分を多く含む、「重め」で保湿力・補修力の高いタイプを選び、髪の内部にしっかりと栄養を閉じ込めます。
軟毛・細毛でボリュームが欲しい方へのアドバイス
この方の髪の状態: 髪一本一本が細く、トリートメントなどで重くなりすぎるとペタッとしやすい。
シャンプー: アミノ酸系やベタイン系で優しく洗い上げつつ、シリコンや油分が比較的少なめの、軽い仕上がりのものを選びます。頭皮環境を整えることで、根元からハリのある髪を生えやすくします。
トリートメント: 内部補修メインで、サラッと軽い仕上がりのトリートメントを選びます。重すぎるオイル成分を避けることで、ボリュームダウンを防ぎます。インバストリートメントよりも、**アウトバストリートメント(ミルクタイプ)**での保護を重視するのも有効です。
【まとめ】
結局、あなたのヘアケアに必要なこと。
この記事を通じて、美容師としての私の本音が伝わったでしょうか?
シャンプーとトリートメントの重要性について、改めて結論をまとめます。
アイテム役割優先度投資のポイントシャンプー髪と頭皮の**「土台」**を整える(マイナスケア)最重要洗浄成分にこだわる。アミノ酸系・ベタイン系が理想。トリートメントダメージを**「補修・保護」**する(プラスケア)従属的シャンプーで土台を整えた上で、髪の悩みに応じた成分を選ぶ。
美しい髪は、高価なトリートメントで作られるのではなく、**毎日の丁寧な「土台作り」(シャンプー)**によって育まれます。
もし今、あなたがヘアケアに悩んでいるなら、まずはトリートメントではなく、シャンプーを見直してみてください。あなたの髪質や頭皮環境に本当に合ったシャンプーを選ぶだけで、髪の未来は劇的に明るくなります。
この美容師の本音が、あなたのヘアケアに対する考え方を変え、理想の髪を手に入れるための一歩となることを願っています。
【お知らせ】
お客様の髪質や状態に合わせて、最適なヘアケアをご提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談くださいね。
【執筆者略歴】
才野 栄治
1969年6月広島県生まれ
1985年美容師に3店店舗で経験
2000年4月神戸元町にhair design Ray'zをオープン
2012年2月三宮に移転、くせ毛に特化したサロンに
【資格・実績】
美容師免許
管理美容師免許
美容師歴40年
延べ10万人を担当
講師活動、延べ1.000人を指導
TV出演、雑誌掲載多数
受賞経験、カットコンテスト入賞など




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